2012年12月3日月曜日

マスクに黒子、ほくろの点移動について

【12月15日、更新版3】
先行き不透明な今回の衆議院総選挙について、田原総一郎氏がさりげない言葉で、意味深長なコメントをしている。
 「嘉田さんというピュアな人を看板にして、バックには一癖も二癖もある人たちが集まった格好だ。クリーンイメージの嘉田新党で彼らが黒子に徹することができるかどうか。嘉田さんはそうした新党をまとめ議席をどこまで伸ばすことができるか。不安は残る。」(日経BP Net Mail 12/03、田原総一郎の政財界「ここだけの話」:「 守りの民主、攻めの自民。クリーンイメージの嘉田新党は大丈夫か」)  //引用終わり

すでに前回のブログ(「失敗した政治主導の駆け込み寺」)で指摘しておいたように、混乱した政局の原因は、官僚依存脱却の失敗にあった。その反省に立って民主政権3年の評価に絡み、今回の選挙がある。今回の選挙戦の特徴は、政治と官僚の閾を横断するマージナルな争いとなっている点だ。
嘉田さんだけでない。石原さんも橋下さんも、被るマスクは政治家であり(前または現)知事である。知事は選挙で選ばれた特別職の地方公務員、国家試験に合格して各省庁に配属されたエリート官僚と異なることはもちろんだが、選挙で選ばれた国会議員や地方議員に比べると、公務員である限り官僚の一員である。知事は地方自治体を指導する立場にあり、地方官僚を代表してその職務を遂行する。働く場所が中央であれ地方であれ、官僚の位が上級であれ下級であれ、国家公務員には黒子に徹して国民のために自分を捨て、公共的職務(公務)を全うする責務がある。知事に国会議員との兼職が禁止されている点を除けば、責務はほぼ同じである。
それに対して政治家(国会議員と地方議員)は、黒子であるより政治の表舞台に立って陣頭指揮を執り、必要にして有効な政策を練り実現する緊急性の高い課題を背負っており、官僚依存は建前上もご法度か本音では保身腐心の隠れ蓑にされていることが多い。
日本未来の嘉田党首がいくらピュアなイメージのマスクをしていても、曲者ぞろいの政治家たちを同じ屋根の下に纏めきれるのか、それとも彼ら(小沢グループ)に逃れ場・隠れ家を提供することで、本音では頭角を現したい連中の勢いに飲み込まれるのか、今のところすべては未知数であり予断を許さない。政治家と官僚が旧来の依存し癒着した利害関係を改め、今が取り直し・仕切り直しの時であることを思えば、即断は禁物である。小沢さんが嫌われ阿部さんが好まれるのもマスクしだい、というのも困ったことだ。党首自ら黒子となって働くモノに徹するのは、いったいどちらだろうか。大衆受けする甘いマスク(ポピュリズム)に騙されてはなるまい。脱インフレを、戦争特需で解決できるといった期待を抱かせるのは、挑発的で危険極まりない。
ところで、「黒子」とは何だろうか。黒子はヘルパー、芝居の晴れ舞台で演じる主役を背後で支えるわき役である。「黒子」が表舞台に出ることはまずない。出たら本末転倒で、その時点でお芝居はお終い、映像画面はカットされる。「黒子」はフランス語でスフレーァ(Souffleur)、主演者が台詞(セリフ)を忘れないよう、背後でセリフづけの役割に徹するのみ。ドイツ語では ein schwarz-gekleideter Bühnenhelfer(ビューネンヘルファー、直訳で、黒装束のステージヘルパー)。某辞書にKastengeist(カステンガイスト、上流階級の「社会偏見」)とあるのは、ちょっと理解しがたい。これではまるで、語源がカースト(階級制度社会)の排他意識と直接関係があるかのようで、無用な誤解を生じる。
漢字の黒子には、そういった意味合いはない。三省堂の『全訳・漢字海』によれば、黒子は本来マスク(面)の「ほくろ」という意味、地図の上では「小さい土地」、太陽の黒点が例に挙げられている。転義的に「黒衣の人」、つまり黒衣を纏った仏僧の総称でもある。官僚であれ政治家であれ、自分(私心、党派的エゴ)を捨てて国民に仕える、それなりに「黒衣の人」であることに徹することができるかどうか、政治的「存在」の真意が問われる。そこが、仕切り直しの試金石となろう。師走の選挙では、脱原発が本心から出たものかどうか、党首のマスクをよく見破り、黒子たちの動向(=ほくろの点移動)をしっかりと座標に見極めたい。
話を本題に戻すと、黒子(省庁のエリート官僚)が利権を占有する構造に誰がメスを入れることができるのか。すでにドイツで実験済みの、脱原発を謳えば当然電気代の高騰が見込まれる、その結果国民の負担が増大する厳しい状況にどう対処するのか、立候補の説明責任が問われよう。デフレを脱却するにしても、クリーンなエネルギー政策を打ち出すにしても、基本は原資のエネルギ-(x)を商品のエルゴン(y)に変換する、一次関数(y = f (x))の知恵比べ、猿まねでない、ホモサピエンスのすることである。必ずどこかに、マージンを操作する隠しの切り札=切片(+b)のプラスアルファーがある。まずは、お手並み拝見と行こう。
 Shigfried Mayer, copyrights all reserved, by 宮村重徳, the Institute for Rikaishakaigaku