2015年8月26日水曜日

ダルマさんに目を入れる、大事な節目を考える

 心仏を思う大化の改新に反旗を翻した物部の一件は昔のお話し、神を考えることを忘れて以来の思考停止は珍しくないが目に余る。実学に凝り技術に溺れることで近代人が陥った「存在の忘却」(ハイデガー)も困ったもの、それ以上に、教養を度外視し「無の忘却」に及んでは、「未成年状態」からの脱却は到底望めない。
  ところで、僕がダルマの話をすると、一部で時代遅れではという声が聞かれる。どんでもない。ダルマに学ぶと、宗教者の執拗な偏見が砕かれ、近代人の鈍った悟性がリフレッシュされる。理解社会学の古典モデルとして注目されたこと。
  「史的ダルマの研究」に専念する直接の引き金となったのは、大島淑子先生の明治大学での講演「ハイデガーと芭蕉」、それも東洋大学で宗教学Bを講じた際に面識を得た名誉教授の河波昌先生(「住」-場所的主体性論、クザーヌス論)の強い影響、学生時代に愛読した久松眞一の「東洋的無」(能動的無)と西谷啓治の「宗教論」、加えてテュービンゲン時代の友人で当時大谷大学の助教授だった堀尾孟氏の介在なしにはあり得なかったことを、遅ればせながらここで告白しておきたい。因みに、我が家の宗旨が代々浄土真宗の篤い檀家であったことも。叔父の宮村光徳が東京大学文学部の学生であった時に自殺をする。この事件をきっかけに、父は長男の私をルーテル派の九州学院中等部に入学させた。父の思惑に反して、一年後に僕は洗礼を受け、家業を継ぐことを拒否して神学校付属の高校に進むことになる。振り返れば、亀谷凌雲を初め大事な節目となる人との出会いがここに始まる。
 付記:史的ダルマの壁観を論じた本論(プラハ講演)のドイツ語訳が遂に完成!来春公開予定。邦文論攷の掲載を許していただける紀要を模索中。また、理解社会学関連の論文集と『史的ダルマの研究』の出版を引き受けてくださる方(出版社)あれば歓迎したい。
Shigfried Mayer(宮村重徳), copyrights © all reserved 2015, the Institute for the Interpretative Sociology Tokyo

2015年8月23日日曜日

理系実学優先と文系不要論のつけ、世代論は先細り

  文部科学省が推し進める大学再編案、理系の実学優先と文系の不要論・統廃合の試みに、随所で懸念の声が聞かれる。奈良平安時代に始まる日本固有の精神文化の芽を摘み、文芸復興の足場を崩してどうするの?近代人が学び損なった宝の山(Schatzkästchen)が歴史(神話や逸話を含む)には隠されているのに。手摺りなしに、どうやって自ら考える力を養えというの?間に合わせの政策で、世代論は先細りして後退するのみでは?
8月27日更新。
Shigfried Mayer(宮村重徳)

2015年8月9日日曜日

悪夢の大量破壊兵器、霞む赤と黒の記憶、戦後七十年によせて

 遮二無二有事体制の安保関連法案を通した安部現政権の政治判断の過ちを正すに、被爆者を偲ぶ8月の今がそのよいチャンスではないか。
 敗戦濃厚な状況下で、原爆投下は必要でなかった。戦争を終わらせる手段としても、故意に非戦闘員の大量殺人を狙った原爆投下は到底赦せない。戦勝国・敗戦国を問わず、世界市民の感情としてはそうであろう。もっとも、日本が仕掛けた第二次大戦と大東亜共栄圏の構想自体が間違っていたのだから、文句の付けようはないのだが、矛を収める時を逸したことで、政府は悲惨な末路を辿ることを国民に強いることになってしまった。「引き際」のむずかしさを思い知らされる。
 戦時下とは言え、人類史上あってはならない未曾有の事件、人の形をとどめない焼けただれた塊に、赤と黒に塗りつぶされた地獄絵に、戦争を知らない世代の君たちは今何思う?
 私は思う。虚無化と廃人化をもたらすだけの大量破壊兵器(a Weapon of Mass Destruktion)の使用禁止を唱えるなら、昨今のイラク戦争に限らず。原爆投下の第二次世界大戦にまで遡って、自らの襟を正す必要があるのではないか。ピューリタンのアメリカがカトリックの長崎にまで原爆を投下する必要がどこにあったのか。ルーズベルトとトルーマンの政治戦略に一抹の逡巡・錯誤はなかったのか。
 矛盾したこの気持ちを理解できるのは、オバマさん、歴代アメリカの大統領の中で貴方の他にいない。政治的決断の迷走と過誤の可能性を理解できるのは、合衆国の大統領の中で貴方しかいない。民主党・共和党の次期大統領候補者に当面望めそうにない。過去の大戦を振り返り、その反省をもとに責任を自覚した上で、戦争行為を憎みはしても、私たちはアメリカ国民を憎んだり、ロシアが望むような「戦争法廷」に訴えることを望んだりしません。どこまでも、平和を願う日米双方の子供たちの為です。日本にお越しの際には、広島と長崎の被爆地を訪問し、痛みを共有するアメリカ国民の良心ある所を子供たちに示してください。
 ケネディー駐日大使、ぜひオバマ大統領訪日の際に現地で献花していただけるよう働きかけてください。戦争を退け平和を愛する一国の大使として、日米間の諒解関係深化を促し、明日を担う世代の育成と交流の仲介をされることを心より願ってやみません。
8月20日更新

Shigfried Mayer(宮村重徳), copyrights © all reserved 2015, the Institute for the Interpretaitive Sociology Tokyo