2022年5月12日木曜日

宇宙万象のリソースはガスと塵、エネルギー資源争奪戦の行方

 ·        前回ブログの続編、『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』が念頭にある。悟性同様、理解も精神もヌース。見えざる精神は不在の仕方で働くモノ、これを空として捉え直す、運動論的関心から、空け開く場(スペース)を位相幾何学的に探求する(Topologocal Research)必要が生じる。観測者(モニター)の討議要件が残るが、今日では情報科学の課題でもある。

·        例えば、願わしい国際平和のために何が必要かを考えるに、諸学を横断する行為者の知性改善論が求められる。知性とは、またしてもヌース、ラテン語でインテレクトゥス(intellectus)という。 旧くはスピノザの『エチカ』で、遺稿となった小論『知性改善論』で知られる、政治神学の実践課題。更に、オイケンの直弟子マックス・シェーラーが『実質倫理学』の課題として追究、『コスモスの中の人間』は道半ばの作。マルティン・ハイデガーの『オントロジー(事実性の解釈学)』の影に押しやられ、矢が折れてしまった。

·        シェーラーは、内奥的人格と社会的人格の狭間(立つ瀬のないスペース)で突破口を模索するよう、当時青年運動を指導する立場にあり活躍していたこと。エドモント・フッサールとの係わりの中で「内的時間の現象学」探求にひた走るハイデガーと、心理学的解釈を退ける点では両者と一致するが、「壁」理解のアングルを異にする点が注目される。言語の壁であれ民族精神のそれであれ、壁や幕はスペースを仕切るもの。どちらにせよ、いざ叡智を以て、自分の悟性(ヌース)を行使する勇気(カント『啓蒙とは何か』)、或いは存在への勇気(ポール・ティリッヒ)が要請される。

·        たかがガスと塵、されどガスと塵。物質の霊化(半田)を考えればなおのこと、ヌーロジーの系譜にそれをたどると、カントを初めオイケンもシェーラーもボッパルトも、ヴェーバーもフッサールもハイデガーもティリッヒも、今話題の人マルクス・ガブリエルもみなドイツ人。アングロサクソン系は、ユダヤ的知性と縁が深い。それは理由があってのこと、考える力は言語次第。摂食の如何にが問われる。

·        和製英語では、グローバルなアカデミー界に通用しない、学際的に討議できない。感性言語の区別と定義は後でいい。それでも、発想の豊かさ・着想の鋭さには驚かされる。随所にきらりと光る石あり、石庭の飛び石のようだ。点を線にするに、対座して親しく語らい食を共にする、陽だまりの縁側が欲しいところ、半田のヌース・アカデミアには、未来の子らを育成するために、流動食だけでは足りない。咀嚼するには硬めだが、歯ごたえのあるドイツ語の学習機会を設けることが望ましい。もちろん、ライ麦系の言葉を食しても胃腸での消化次第、生肉は火や熱を通さないと下痢をするが、エネルギー争奪戦は味わう舌ですでに始まっている。

·        熱源はもっぱら宗教的風土、深海の熱水噴出孔に微生物が群がるように、エネルギー資源争奪戦の背景には、宗教的動機が見え隠れ、例えば、プーチンのウクライナ侵略戦争を賛美し聖戦として祝福する、キリル・ロシア東方正教会総主教の影響が見逃せない。55日(木)、フランシスコ・ローマ教皇が「理解できない」と言い、ズームで(プーチン大統領の)「侍者になるな」とキリル総主教を叱責したそうだが、愛国精神を培うロシア的敬虔の根深い虚勢を穿つ勇気、フェイク情報に呪縛されたヌースの批判的行使は当然だろう。黒幕と疑われる大統領補佐官ウラジミール・メジンスキーの影響については、別途に譲る。

·        宇宙万象のリソースはガスと塵、いずれ地上の危機的事態は収束し、ガスと塵を巡る宇宙のエネルギー資源争奪戦にまで発展するだろう。そうなれば、ヌーソシオロジー(理解社会学)の出番となる。あくまで私見だが、半田のヌーソロジーはそのショートカットとして、より柔軟で射程の広い有効性を十二分に発揮することになろう。怪しく色めく主観的な民族共同体の精神(プロパガンダは洗脳の道具)をモニターする、経験妥当で諒解可能なシャンスの保証とモニタリングが必要となる。制約の多い古典モデルだが、とりあえず今はカントとヴェーバー、倫理ではシェーラーに注目しておきたい。

·        異なるイデア空間のモニタリングについては、場所論や記号論との微調整が必要となる。チャネルの認知空間と諒解可能性について詳しく論じる中で扱いたい。日経新聞の論説主幹・原田亮介が424日付で公開した最新記事「カントが嘆く新しい戦争、戦場は宇宙と認知空間」が参考になる。次回紹介する。

·        エイジング・ゼロに息吹く精神の現在、「遅れてきた青年」(大江健三郎)に、世代の壁はない。次々回ブログ(6月以降)のお楽しみ。

Shigfried Mayer(宮村重徳),  copyright © all reserved 2022,  法政大学大原社会問題研究所嘱託研究員