2019年7月31日水曜日

巣の温もりに翼を得て、さまよう子らが家郷を見出せるように

「巣の温もりが翼をくれる。」とは、温もりがないと硬い殻を割れず、翼がないと巣立ちできないから。更に一歩踏み込んで、「あなたの内に宿る子供の家郷を探し求めよ。」とは、ドイツの女性心理学者シュテファニー・シュタールの書物に一貫する命題。発達障害に悩む子らに適格なアドバイスを与えている。巣立ちに翼を・自分の内にいる子に家郷をとの発想は、人格心理学や社会心理学の領野に限定されない。広く政治社会の分野にもアニメイト可能な願い事を、波形のイメージで追認し共有できる。
例えば、個の尊重と人権の保障がデモクラシーの風土を培い、言論の自由と信教の自由が資本主義の精神を温める。見えざる精神は翼を得て不在の仕方で働くもの、派生態とはそこが違う。唯物論的簒奪に終始する共産党独裁下の資本主義システム、トータリズムの国家主導型資本主義との決定的差異を見せつける。
昨今の香港に息づくプロテスタント的抵抗精神を風前の灯火とするな。イソップの童話にあるように、赤ずきんちゃんは、訪れた狼の足元を見て扉を叩く存在の正体を見破る。良心の証として何ものをも寄せ付けない、彼らこそ日中韓の若者たちが学ぶべき自己肯定のモデルではないか。自己肯定に自信がないから現状維持に票を投じるだけの若年世代に、存在への勇気を与える。籠る自分の殻を破り捨て、安心して社会の障壁を跳び越える、自立のチャンスとなろう。
シュテファニー・シュタールの原書はドイツ語、現在鋭意翻訳中。理解社会学研究所主催の読書会で取り上げる予定。テクストはコピーして手渡すが、ドイツ語が分からなくてもいい。参加して突破の手掛かりにしてほしい。受講無料。受付開始。場所と日時は選定中(東武線とうきょうスカイツリーラインの獨協大学前にあるカフェーOB松原店か、公団三郷の第一集会所)、シフト労働のために土曜日と日曜日が使えず、第一水曜日か第三木曜日夜19時半以降を予定。受講者の希望を聞き、個別の相談に応じる。
Shigfried Mayer(宮村重徳)、copyright © all reserved 2019, the Institute for Interpretative Sociology Tokyo

2019年7月4日木曜日

乱世に生きて己を全うする、してその心は

米中の貿易戦争に歯止めなく、鬩ぎ合う乱世に心すべきこと、雄弁に世界を語る言葉が軽すぎて、重圧を受け生息吐息の傷心に釣り合わぬ。軋む音色はノイズばかり、それより遊び心で謳いあげ、曇天の霞を吹っ飛ばせ。「一と言わば二を出さん、二と言わば一を出さん。」(江戸の『達磨出生記』より)。引っ越し先で、「達磨さん転んだ」と歌う母子あり、思わず頬が緩む。達磨歌に拳遊び、七転び八起きして、内心外心の偏りを正すのみ。遊び心が縁結び、歴代禪師の中で果敢に正偏(しょうへん)を問い質す、洞山五位説は偶然でない[1]、今日の脳神経科学で立証済み。
貧窮しても不惑の人、無心は見せ球でない、「反骨精神」(水上勉)を以て軸ぶれせず。兵法の他にトランプ氏が中国に学ぶべきこと、中国禅は安心壁観にルート持つ、対話問答のマイスター。上昇下降の動態に平常心失わず、自ら遜ってこそ芯は燃え光を放つ。『十牛図』と『無心』(鈴木大拙)はお勧めの必読本。共産党独裁の国家資本主義批判はその後でいい。資本主義の精神を欠落させたままで、改革派を装う赤装束の擬制はすでに綻びを見せ始めており、補助金をばらまき党員の利回りに腐心して体制維持に成功しても、下層農民たちは相変わらず蚊帳の外、いずれ自己破綻するか自壊するを免れない。ただ、中国政府は貧困対策として大規模な移住計画を実行中、プロパガンダとの噂あり焼け石に水という話も聞かれるが、その成果次第で評価も変わろう。トランプ氏が中国禅に学んで自ら変貌し、アメリカ合衆国の未来を変える可能性を排除しない。同じことが習近平氏についても言えるが、安倍晋三氏については残念ながら当たりそうな予感がしない(のは私だけだろうか?読者に聴きたい)。
Shigfried Mayer(宮村重徳)、copyright © all reserved, July 2019, the Institute for the Interpretative Sociology(理解社会学研究所)

 




[1] 洞山五位説、洞山和尚は曹洞宗の禅師。法界を偏(差別。現象。事)と正(平等。経験以前のもの。理)に分け、これを組み合わせた五つの形式(五位)で平等と差別のあり様を説明したもの、平等=無差別の世界を明らかにすることを最終目的とする。