2017年5月5日金曜日

社会学の基礎用語(その一)、事実と現実について

デュルケームの「社会的事実」(fait social)で知られている通り、事実(fait =Faktum)は社会学用語ですね。事実性(Faktizität)は、例えば、某会社倒産という噂は事実か、それとも事実無根なのか。所与としてある言説の真相がどうなのか、端的に本当か嘘かと問い質されています。社会事実の嘘を暴く、隠れた事実は容赦なく暴露される。その反対に、限りなく疑わしいか、誰が見ても明白な事実なのに隠蔽されていることがあります。例えば、19世紀の欧州で増えた自殺統計が社会矛盾を露呈して、庶民に衝撃を与えたことは周知の事実ですね。初期ハイデガーが『オントロギー(事実性の解釈学)』講義でみせた事実性の解釈が、覆われの無さだとする真理の理解に通じるのはその為です。
これに対して、現実や現実性(Wieklichkeit)と云うのは、自然科学や精神科学が問うことで、夢や理想なのか現実のことなのか、ヴェーバーは「理想型」(Ideal-typ)を立て「現実型」(Real-typ)に対置しています。ヴェーバーは理想型を追求しますが、経験妥当性を求め取り組む姿勢では現実科学的です。他方、現実性(Reality)は実在性と訳します。アーレントが云う現実性(Aktualität)は、政治的領野での活動的現実性のことです。この三つはしっかりと区別できるようにしておきましょう。詳細は次回に、今日はこれまでとします。質問があったらどうぞ。