2020年6月12日金曜日

グローバル世界の秩序崩壊から宗教社会学の復権へ

新型コロナウイルス事件で十分わかってきたこと、これまで神々が仕事を司ってきたことを、これからは我々人間が神々に成り代わり、取り仕切る責任を負うことになる。神不在を名目にして、生命倫理を無視した勝手な振る舞いをすることは、神ならぬ人の誰にも許されない。今日の政治経済の諸問題は、宗教社会学喫緊の課題となる。何をどう語っても通じない、微生物が人間存在に投げかける言語を絶する諸問題に直面する今、働くモノとヒトの対話に無への自覚性が必要となろう。
もう一つの気になる話題、中国共産党が推進する国家資本主義(National Capitalism)の実態は、欧米の市場型資本主義(Free Market CapitalismNHKの人気経済ドキュメントでは「欲望の資本主義2020、不確実性への挑戦」)との対比でどこまで把握できているか。ナショナル・キャピタリズムは、成り立ちからして「盗賊資本主義」(Capitalism of Robbery)ではないのか。高島俊男の『中国の大盗賊―完全版』(講談社現代新書)が参考になる。高島は東京大学経済学部卒、大学院で中国文学を専攻し人文科学研究科を修了している。「お言葉ですが…」などで、ポピュリズムの火付け役として知られる。囲碁を趣味とする異色の存在である。毛沢東までその大盗賊系に含めるとは、大風呂敷に聊かの懸念は残るが。乱暴でも一読に値する。
この書について、「中国共産党のマルクシズムは看板だけで、その革命の本質は昔ながらの盗賊集団の天下取りだから、経済を資本主義に変えても問題なかった。現代中国を歴史的に理解する視座を与えた名著である」と、産経新聞の論壇人・磨井慎吾は高く評価している。共通する関心は、人工知能のAI技術を駆使した監視型ポスト・キャピタリズム(Survillance)への取り組みだろうが、今はあえて立ち入らない。
グローバル政治経済体制崩壊の危機に際して、宗教社会学復権のチャンスを掴むことができよう。マルクスの『資本論』とヴェーバーの『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』を精読して、議論を本筋の軌道に戻すようお勧めする。欲望の時代に哲学する、マルクス・ガブリエルの話題の書はその後でいい。6月15日更新
Shigfried Mayer(宮村重徳), copyright © all reserved 2020, 理解社会学研究所所長、法政大学大原社会問題研究所嘱託研究員、㈱岡本カンパニー講師
 

2020年6月1日月曜日

分極化する世界、コロナ型国家資本主義と市場型欲望の資本主義

情報戦争の最前線では、資本主義の古典的定義に収まらない、派生態の特異性(シングラリティー)が討議されている。中国共産党言論統制下で変異したコロナ型国家資本主義(ナショナル・キャピタリズム)と、言論の自由と競争を原則とする株式売買による欧米の自由市場型「欲望の資本主義」の鬩ぎ合いに見える。しかし前者では、失われた資本主義の精神とプロテスタントの倫理が話題とさえならない。せいぜい、天上の火(コロナ?)を盗んだプロメテウスと同罪の、技術盗用の疑いがもたれている。コロナは核融合の秘密だが、アナログな微生物学や経済学のシンボルとしても目が離せない。
例えば、ナオミ・クラインが「コロナウイルス資本主義」というのは、中国へのさや当てではない。新型コロナウイルスのパンデミックは、合衆国市民に革新的変化を促すチャンスだと訴えている。『ショック・ドクトリン―惨事便乗型の資本主義』(2007年)の著作で知られる。[1]
他方、ショシャナ・ズボフは、今は「監視資本主義の時代」と言っている。その証拠に、「グーグルで検索のつもりが、グーグルに検索されていた」、監視的事実の相互関係が発覚した。[2] 
クラインとズボフ、二人の見方は、中国共産党の「国家資本主義」(National Capitalism)を意識したもの、論述スタイルで二人は一致する。わたしは、あえてパンドラの箱との関連で、コロナ型風に変異したナショナル・キャピタリズム(国家資本主義)の汎用的解釈事例として二人に注目しているが、所詮パンデミックへの表層的リアクションを出ないのでは。
それより、経済人(ホモ・エコノミクス)の深層を突き動かす貨幣欲が問題である。ジョセフ・スティグリッツの発話をめぐる『欲望の資本主義2020-日本・不確実性への挑戦』(NHK BS1ドキュメント・シリーズ)の評価が待たれる、これもアングロサクソン的発想(プラグマティズム)の枠内で横にスライドする、竪穴式に代わる横穴式の祭りごと、ネット上で何を神輿(みこし)に担ぐのか、欲望(Begierde, Begier, Gelüste)次第で世界の語り方・神輿の担ぎ方(資本運用の仕方)が違うだけのこと、理解社会学の「批判的共感」(アンソニー・ギデンス)を持ち出すまでもない。
評価は個々人の価値観や噂事(ツイート情報)も絡むこと、宗教的・政治的立場でころころと変わるから、ブログの読者には、カール・マルクスの『資本論』とマックス・ヴェーバーの『プロテスタントの倫理と資本主義の精神』の二本、古典の精読をお勧めしたい。いずれもドイツ語、原文で読むのがベストだが、時間があれば邦訳の読書会を再開してもいい。わたしが尊敬する哲人政治家ヘルムート・シュミットと異なり、現首相のアンゲラ・ドロテア・メルケルは理系女、国民の信頼と安心抜群の存在として注目される。今ネットで話題の人、欲望の時代に哲学する、マルクス・ガブリエルについては別途に述べる。6月3日更新
Shigfried Mayer(宮村重徳), copyright © all reserved 2020, 理解社会学研究所所長、法政大学大原社会問題研究所嘱託研究員、㈱岡本カンパニー講師