2020年1月11日土曜日

ゴーン被告の虚実を問う、言質は自分を裏切らない

レバノン逃亡についてのゴーン氏の釈明が、世界の新聞紙上を賑わせている。国内の報道では、「(日本の)人質司法を耐えているたくさんの人には、私が持っている特権がない。私には発言力と金がある。他の人にはできないことができる」と語った。この発言で十分、釈明の綻びは明らか。日産の窮地を救った功績を鑑みるとしても、権力を振りかざし、金次第で自分の思い通りのことができると言って憚らない。ヴェニスの商人どころか、ロスチャイルドを連想させる。「地獄の沙汰も金次第」という諺通りだろう。法の裁きを逃れて、何をか況やである。明日12日に成人式を迎える若者と子供たち、こんな大人にはなってほしくない。
 カルロス・ゴーンはユダヤ人ではないが、フランスでは移民として、反ユダヤ主義と同列の国民的反感に晒されているらしい。純丘耀彰(すみおか・てるあき、東大卒の文学博士、大阪芸術大学芸術学部哲学教授)の指摘によれば、「フランスの支配層、財界人や政治家は、ゴーンの一件に。ドレフュス事件を重ねて見てしまっている。かつて自分たちが無実のドレフュスを悪魔島監獄に送って殺しかかった悪夢をかってに日本に投影し、自分たちの過去の罪業を贖おうとしている。しかし、フランスの庶民からすれば、ゴ-ンは「移民」であり、マクロンは「ユダヤの犬」。ただでさえ、ルペンのような極右が勢力を増しているのだから、対応を誤れば、フランス国内にくすぶる反ユダヤ、反移民の感情に火を着けかねない。いや、もう着いているのかもしれない。だから、日本が、その一方の言い分を真に受ければ、連中の内乱の巻き添えを食らう」ことに。[1]
 日本の政治家、検察官と弁護士の皆さん、これを考えるヒントにしてほしい。今後増えると予想される外国人の収監を鑑みれば、人権に係わることについてはなおのこと、「人質司法」の誹りを招かないよう、グローバル時代に見合った法制度の再整備は急務。社会言論の歴史を知らずに評論家ぶっているだけでは恥をかく、手痛い火傷どころか致命傷を被ることになる。
115日(水曜日)更新
Shigfried Mayer(宮村重徳), copyright © all reserved 2020, 理解社会学研究所所長、法政大学大原社会問題研究所嘱託研究員、㈱岡本カンパニー派遣講師



[1] 純丘耀彰「カルロス・ゴーンとドレフュス事件・パリ暴動:フランス百年のトラウマ」。

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