2014年12月8日月曜日

「国民国家」の崩壊を未然に防ぐには、表層から深層へ政策転換が必要

 2006年にコフィー・アナン国連事務総長により、マーク・マロック・ブラウン官房長が副事務総長に任命されて以来、8年の歳月が経った。英国オッスクフォード大学出身の52歳。このブラウン氏が最近、「東洋経済ジャーナル」最新号に寄稿論文を寄せておられる。すでにお読みになった方もいると思うが、まだの方は必読に値する。
 「旧来秩序は役に立たない。今起きているのは、欧米型システムの崩壊だ。必要なのは、政府と民間の利害関係者によって考案された規則、規範、制度の正当なシステムである。経済、政治、社会活動のグローバルな性質を反映させることで、非国家的構造のパッチワークと共存しなければならない」。
 欧米型システムとは、欧米を基準とした国民国家のシステムを指している。今や高度の情報技術が行き交う中で、国籍不明の混乱した経済活動によって、国民国家の存立自体が危険にさらされている。先進諸国を利するだけの「統治モデル」が批判されているとブラウンは指摘する。「正当なシステム」とはいかにも曖昧だが、新たな規則・規範・制度を模索するに必要な国家的「諒解」システムには、グローバルな視野で「諒解関係」を相互保障する新たな「法」的秩序(reglement par se consensus)が求められよう。
 ヴェーバーの「諒解行為」概念は、長山恵一の指摘する通り、どこか曖昧さが残っている。昨日早稲田大学で催された「ヴェーバー生誕150周年記念シンポジウム:戦後日本の社会科学とマックス・ヴェーバー」での諸氏の発題を聞いても、その疑問は最後まで残った。唯一水上彪の「支配と法-憲法改正問題についてのヴェーバー的読解の試み」にポジティブな印象を受けた他は、終始「はてな」のやり取りばかりで、早退するもやむを得なかった。
 具体的に、どのような「法」的秩序が描かれようか。パッチワークをヴェーバー学会に期待したいが見通しはまだない。では、経済・政治・社会の下位的利害関心を偏りなくロードできる上位の座標系はないのか。上下秩序の重なりが不十分であれば、表層と深層の重なりでもいい。幾重もの社会断層に活力を与えているのは、深層の働き(Vektor aus der Tiefe)だからである。もし非国家的構造なるモノを考えるとすれば、深層から無差別に押し寄せるモノの力を受け止め、これに準ずるか撥ね退けるヒトの連帯構造が問われよう。宗教を含め、国籍や経済利権を超えて連帯するには、表層の右往左往に惑わされず、社会の深層へ楔を打ち込む政策が必要ではないか。
 宇宙の深部にある見えざる壁に瞑想入りして、見る人の目から顔を背けているそのヒト(ダルマ)に学ぶ良いチャンスである。(12月15日更新)                                                                                              
Shigfried Mayer(宮村重徳), copyrights © all reserved 2014, the Institute for the Interpretive Sociology Tokyo