2013年5月3日金曜日

どうして債務不履行が初期設定に?- デフォルトの意外な多義性

default, defaut, Schuldenverzug, was ist denn das?
デフォルトとセキュリティーの関係について、メールでたくさんのご質問をいただいたので、まとめてお答えしておきます。
通常デフォルトとは、法律用語で「為すべき義務をしない・怠る」、法廷に「出頭しない・欠席する」こと、経済用語で「債務支払いを怠る、債務不履行に陥る」ことです。リーマンショックの世界金融危機で問題となった、鬱陶しいあのデフォルト連鎖事件を思い出してください。これは決して、ITと無関係ではありません。語源上は、法律的意味合いが先にあり、IT関連の誰かが後から違った意味で使い始めたのでしょう。
IT用語では、ユーザーが何も操作や設定をせずに「初期状態にある」こと。例えば、予めハードウェアーやソフトウェアーに組み込まれた設定値をデフォルト値と言いますね。ユーザーが各種設定を自分でしなければならないと面倒なので、一般に妥当とされる平均的且つ典型的な利用環境を想定して、メーカー側で予め適当な値を付けて組み込んでおくのが普通です。カスタマイズの権利をユーザーに保証する意味で、平均値以外は「履行せず」の白紙状態にしてあるわけです。
ただし、カスタマイズ後にも注意が必要です。ユーザーが自分の利用環境に合わせて様々な設定の見直しをする必要があるのに、面倒とばかりそれをせずに(メンテナンスの履行を怠って!)デフォルトのままで使い続けようとすると、予期せぬ不具合(余計な債務)が生じます。最近の具体的な例を挙げると、セキュリティーリスク対策として頻繁にバージョンアップされているIEへの新たな自己環境の再設定・アップデートによる微調整を怠っていると、不具合の未調整(債務不履行)による綻びは避けがたく、結果としてデフォルト依存からセキュリティーリスク(脆弱性)が生じ、知らぬ間に文字化けを伴う「レイアウト崩れ」が起きるということです。
さて翻って考えてみると、色々なことに気づかされます。君が何をデフォルトに指定しているかそれ次第ですが、レイアウト崩れは潜在的なリスクの予兆、氷山の一角に過ぎません。最後は君自身にかかわること、デフォルト依存脱却の根幹(自律性の有無)が問われることになります。哲学用語で、自分の悟性を使用せずに後見人任せにして「未成年状態に陥る」(カント、『啓蒙とは何か』)のも、啓蒙主義時代以来の自称文化人に典型的な、デフォルト依存症候群の先例だったのです。中身はいつも熱い視線で追う話題のヒトか流行るモノで詰め換えられるので、それとは知らずに君もきっと嵌っているデフォルト依存に、身分や階級・働く分野や国籍・時代の違いは関係ありません。社会学用語で、後見人依存による未成年状態とは、要するに構造的な「甘え」(土井)のことです。ゲーマーやスマートフォンのユーザーに多いので、ご注意ください。その特徴は、一度嵌ると抜け出せない。楽を満喫するとやめられない(つまり、元の不便に戻れない)。違いますか?君の意見を聞きたいな。(5月5日、こどもの日、更新

追記: それは社会学用語で、「要するに構造的な甘え(土井)のこと」だと言いましたが、もちろんカントの崇高な哲学理念とは雲泥の差があり、混同することなど全くあり得ません。ただ、諸君にはそれを手がかり・取っ掛かり(Anlass)として、「未成年状態を脱する」とは如何なることかを自分なりに考えてほしいと思うから、卑近な例!として取り上げたまでです。デフォルト(当座の世論や安価な世界観)に安住して思考停止していないかどうか、吟味する良い機会となることを望むのみです」。(5月12日、H君への返信から)
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